こだま
木霊
 樹木の精霊。木魂・樹霊とも書く。こだまは樹木に宿る精霊を指していう。山中を敏捷に、自在に駆け回るとされる。山や谷で音が反射して遅れて聞こえる現象である山彦は、この精霊のしわざであるともされる。
 木や石、風、土地など諸事物に霊魂が宿るという観念は我が国のみならず、ギリシャ神話に出てくる「エコー」に代表されるように古代信仰に存在していた。
 樹木、木を司る神として久々能智神(くくのちのかみ)が古文書(古事記・日本書紀・延喜式など)に見える。
 平安時代には文芸作品に狐や天狗などと同様にこだまの怪異を説くことが多い。(『源氏物語』夢浮橋に「天狗・木魂などやうの物の欺き率て奉りたりけるにや」、『源氏物語』手習巻には「鬼か神か狐か木魂か、かばかりの験者のおはしますには、え隠れ奉らじ」)古くなった木々には「樹神も住むべし(今昔物語集27の31)」とされた。
 外見はごく普通の樹木であるが、切り倒そうとすると祟られるとか、神通力に似た不思議な力を有するとされる。